HPVワクチンについて
2020年12月現在、日本で使用されている子宮頸がんなどのヒトパピローマウイルス(HPV)感染症を予防するワクチンは、サーバリックスとガーダシルの2種類があり、いずれも女性に接種します。日本では、サーバリックスが2009年12月に、ガーダシルが2011年8月に発売となりました。2013年度から定期接種になりました。 2020年7月にシルガード9が承認されました。 『サーバリックス』は、子宮頸がんなどを起こすヒトパピローマウイルス感染症(16, 18型) を予防します。 『ガーダシル』は、子宮頸がんなどを起こすヒトパピローマウイルス感染症(16, 18型) と尖圭(せんけい)コンジローマなどを起こすヒトパピローマウイルス感染症(6, 11型)を予防します。(後述、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症について参照)接種時期と接種回数
推奨年齢は小学校6年生~高校1年生相当の女子です。小学校6年生または中学1年生になったら初回接種を受け、1~2ヶ月の間隔をあけて2回目、初回接種の6ヶ月後に3回目を接種します。ヒトパピローマウイルス感染症を予防するワクチンには、サーバリックスとガーダシルがあります。ワクチンにより接種スケジュールと成分が異なりますので、初回に接種したワクチンと同じ種類のワクチンを必要回数受けることが必要です。
- 推奨年齢以上の女性でも感染を予防するうえでワクチンの接種は有効です。詳しくは、産婦人科医とご相談ください。ただしこのワクチンを接種しても、すべての子宮頸がんを予防できるわけではないので、ワクチンを接種していた場合でも安心せずに子宮がん検診を受けることが極めて大切です。
おすすめの受け方
サーバリックス(2価ワクチン):中学1年生で接種をはじめ、初回接種の1ヶ月後に2回目、初回接種の6ヶ月後に3回目を接種します。ガーダシル(4価ワクチン):中学1年生で接種をはじめ、初回接種の2ヶ月後に2回目、初回接種の6ヶ月後に3回目を接種します。
ワクチンの効果
いずれのワクチンもワクチンに含まれているタイプのヒトパピローマウイルス感染症を防ぎ、子宮頸がんなどの発病を予防します。子宮頸がんを引き起こすウイルスには多くの型があり、できる免疫が弱いので、一度だけでなく何回かかかることもあります。ワクチンの種類によって効果のあるウイルスの型が異なり予防できるヒトパピローマウイルス感染症が異なります。サーバリックス(2価ワクチン)は子宮頸がんの原因ウイルスの2つの型に効果があり、ガーダシル(4価ワクチン)はさらに尖圭(せんけい)コンジローマの原因ウイルスの2つが追加され4つの型に効果があります。両ワクチンともに子宮頸がんの50~70%を予防し、効果は20年くらい続くとされています。日本より7~8年前からワクチン接種をはじめた欧米やオーストラリアでは、ワクチンの有効性が報告されています。
いずれにしても、ワクチンに含まれていないタイプのウイルスによる子宮頸がんもありますので、必ず子宮がん検診を受けてください。検診を受ける率は、欧米では約80%ですが、日本ではなんと約20%とたいへん低いのが問題です。ワクチンを受けた方でも20歳過ぎたらすべての女性は子宮がん検診を受けることが大切です。
2020年7月に子宮頸がんの約90%に予防効果があるシルガード9(9価ワクチン)が承認されました。
ワクチン接種後の注意
接種後に注射による恐怖、痛みなどが原因で、気を失うことがあります。気を失って転倒してしまうことをさけるため、直ぐに帰宅せず30分程度は待合室で座って安静にしてください。ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症とは
ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症で、子宮頸部に感染すると子宮頸がんに進行することがあります。HPVは乳頭腫といういわゆるイボのウイルスで150種類以上あり、皮膚につくタイプと粘膜につくタイプがあります。子宮頸がんの原因になるHPVは粘膜型で、性行為だけでなく皮膚の接触によるものを含めて女性の約80%は知らない間にかかっています。さらに最近は性行為開始が低年齢化しており、その結果20~40代の若い年齢での感染者数が急増しています。
子宮頸がんは一年間に約11,000人の女性が発症し、毎年約2,800人が亡くなるたいへん重大なVPD(ワクチンで防げる病気)です。
がんというと子宮体がんを含めて主に中高年になってからのことが多いのですが、子宮頸がんは20代前半の発症者もおり、30代までの若い患者が多いのが現実です。このがんの原因はHPVの中でも主に16型と18型であり、主に性行為を通じて感染します。(ワクチン:サーバリックス,ガーダシル)
HPVの6型と11型は、外陰部や膣に見られるやっかいなイボで尖圭(せんけい)コンジローマの主な原因となります。尖圭コンジローマは主に性行為を通じて発症し、患者数は男女あわせて4万人とも言われています。(ワクチン:ガーダシル)
重症になった場合
子宮頸部のHPV感染は、約99%以上の方は知らない間にかかって知らない間にウイルスが消えています。しかし約10%の方は細胞にがんでは無い異常が見られ、約4%の方は前がん状態になり、普通はゆっくりと本当のがんに進行します。前がん状態からでも、自然に正常に戻ることが多いのですが、最終的に0.1~0.15%の方(毎年1~1.5万人)が子宮がんになります。子宮がん検診を若いうちから定期的に受けていれば、早期に発見することが可能です。しかし16型と18型の感染の場合、がんへの進行が早いことが多いので要注意です。早期のがんの場合は、子宮頸部の円錐切除という狭い範囲をとる手術で治療します。ただし早産しやすくなります。進行してくると大がかりの手術になり、妊娠できず手術後の障害も多いものです。またがんになっても末期まで無症状であることが発見を遅らせている原因です。
このようにがんになる可能性は低く、進行は普通がゆっくりで、繰り返しの検診により発見することが可能ですが、それでも残念ながら毎年約3,500人が亡くなっているのが現実です。
6型と11型のHPVによって尖圭コンジローマという外陰部のイボが引き起こされますが、完全に治すのが難しく精神的な苦痛も大きいものです。そして妊娠するとイボが急速に大きくなり、産道を閉鎖して帝王切開になることもあります。また生まれた赤ちゃんののどに感染して、子どもの気管支など空気の通り道に乳頭腫というイボが繰り返しできて呼吸困難になることがあります。時には100回以上の手術が必要な子どもの反復性呼吸器乳頭腫症(JORRP)という難病になります。日本でも毎年数十人以上はかかっているとされています。
(NPO法人:KNOW★VPD! HPより)